要介護認定の区分変更申請、するかしないか|退院前に考える判断のポイント

医療・福祉の制度、支援

「入院中に要介護度を上げた方がいい、と言われたけど、本当にそうなのかな」

そう迷っている方は、けっして少なくありません。

入院中は、普段の生活とはまったく違う状態にあります。ベッドで過ごす時間が長く、歩く機会も減る。結果として、一時的に「介護の手間がかかる状態」になっていることはよくあります。

そのタイミングで区分変更申請をすれば、確かに要介護度が上がりやすい。でも、「退院後の生活にとって、それが本当に必要か」は、別の話です。

私自身も今、父の退院を前に、同じことを考えています。

MSW(医療ソーシャルワーカー)として制度を知ってはいるものの、娘として現実的なサービス利用を考えながら、どう判断するか——。この記事では、私が実際に考えていることをもとに、区分変更申請の判断軸をお伝えします。

区分変更申請とは?

区分変更申請とは、すでに要介護認定を受けている方が、状態の変化に合わせて認定区分を見直してもらう手続きです。

「要介護度が今の認定より重くなった(または軽くなった)と思われるとき」に申請できます。通常の更新とは別に、いつでも申請することが可能です。

入院中は「重く出やすい」のが現実

入院中は、病院のルール上、転倒リスクを避けるためにリハビリ以外は車いすで移動することが多くあります。

自宅では自分で歩いていた方でも、病院での生活ではその姿が見えにくくなります。認定調査員が訪問したとき、「歩けない状態」として評価されやすい環境になっているのです。

そのため、入院中に区分変更申請をすると、実際の生活能力より重い認定が出ることがあります

判断の軸は「退院後の生活」にある

区分変更申請をするかどうか、私が一番の軸にしているのは「退院後にどんなサービスをどれだけ使うか」です。

要介護度が高くなれば使えるサービスの上限(支給限度額)は増えます。でも、上限が増えても使わなければ意味がないし、介護度が上がれば利用するサービスによっては自己負担も増えます

父の場合、退院後に使う予定のサービスはこんなイメージです。

  • デイサービス:週1〜2回
  • 訪問リハビリ:週1回程度
  • 福祉用具レンタル(歩行器・手すり付き歩行補助など)
  • 住宅改修(手すりの設置)

このくらいのサービス量であれば、要介護1の支給限度額の範囲でおさまります

負担割合も判断材料のひとつ

介護保険の自己負担割合は、所得に応じて1〜3割です。

父は3割負担なので、もともと自己負担額は多く、要介護度が上がると要介護1より要介護3の方が単価の高いサービスもあり、同じサービスプランでもさらに自己負担額は増えます。

「要介護度が高い方がいい」とは一概に言えません。使う量と、支払える負担感のバランスで考えることが大切です。

要介護度が上がると料金が変わるサービス・変わらないサービス

ここで少し整理しておきます。要介護度が上がると「すべてのサービスが高くなる」わけではありません。

要介護度が上がると1回の料金が上がるサービス

  • デイサービス(通所介護):要介護度が高いほど基本料金が上がります
  • ショートステイ(短期入所):同様に、要介護度に応じて基本料金が変わります

要介護度が変わっても料金が変わらないサービス

  • 訪問介護(ヘルパー):時間と回数で料金が決まります
  • 訪問リハビリテーション:回数・時間で決まります
  • 福祉用具レンタル:品目ごとの金額で決まります(要介護度は関係しません)
  • 住宅改修費:要介護度にかかわらず上限20万円。支給限度額とは別枠で使えます

父の場合、デイサービスは週1〜2回の予定、訪問リハビリや福祉用具レンタルは要介護1の支給限度額の範囲で収まりそう、住宅改修は別枠—そう整理すると、今の要介護1のままでも現実的に対応できそうだと考えています。むしろ要介護度が上がるとデイサービスの回数は同じでも自己負担額だけ増えます。

退院直後は医療保険のリハビリも使えます

「退院してすぐリハビリが途切れないか心配」という方も多いと思います。

脳卒中や骨折など、特定の疾患で入院・治療を受けた場合、退院後も一定期間、医療保険の疾患別リハビリを外来(通院)で受けることができます。

さらに、介護保険のリハビリを開始した月の翌々月末までは、医療保険の外来リハビリと介護保険のリハビリを併用することが認められています(ただし医療保険分は月7単位・140分以内。その後は原則、介護保険のリハビリのみになります)。

例えば7月に退院して介護保険の訪問リハビリを開始した場合、9月末まで外来リハビリと併用できます。10月以降は介護保険のリハビリのみになります。

退院直後のこの時期を上手く使うことで、段階的な移行ができます。

  • 退院直後〜数か月:医療保険の通院リハビリ+介護保険の訪問リハビリで、自宅での生活動作を整える
  • デイサービス・デイケアに慣れてきたら:訪問リハビリを減らし、通いのサービスに移行していく
  • 生活が安定したら:訪問リハビリを終了し、デイサービス・デイケアを中心に切り替える

通院リハビリには「外に出る習慣ができる」という意味もあります。閉じこもりを防ぐ意味でも、退院直後に通える場所があることは大切です。

では、区分変更申請はしない方がいいの?

「しない方がいい」とは言い切れません。状態によっては、申請することが必要なケースもあります。

申請を検討した方がいい場面

  • 退院後、毎日デイサービスに通うなど、サービスをたくさん使う予定がある
  • 要介護1の支給限度額では、必要なサービスがまかなえない
  • 認知症の進行や身体機能の低下が著しく、今の認定区分では実態と合っていない

今の認定のままで様子を見てもいい場面

  • 退院後のサービス利用が少なめで、支給限度額に余裕がある
  • 自己負担割合が高く、要介護度が上がると家計への影響が大きい
  • 入院中の状態が一時的なもので、退院後に回復が見込まれる

迷ったときは、ケアマネジャーに相談を

「どちらがいいかわからない」という場合は、担当のケアマネジャーに相談するのが一番です。

退院後に使いたいサービスの内容と量を伝えれば、「今の要介護度で足りるか」を一緒に確認してもらえます。支給限度額の計算も、ケアマネジャーが具体的に出してくれます。

まだケアマネジャーが決まっていない場合は、地域包括支援センターや病院のMSWに相談してみてください。

まとめ

区分変更申請の判断は、「要介護度が上がるかどうか」より、「退院後の生活に必要なサービスを、今の要介護度でまかなえるか」で考えることが大切です。

  • 入院中は重く出やすい環境にある
  • 退院後に使うサービスの量と、支給限度額のバランスで判断する
  • 負担割合が高い場合、要介護度が上がると自己負担も増える
  • 退院直後は医療保険の外来リハビリと介護保険の併用ができる(介護保険リハビリ開始月の翌々月末まで・月7単位以内)
  • 迷ったら、ケアマネジャーや病院のMSWに相談する

制度を知っていても、自分の親のこととなると迷うものです。「正解」は一つではありません。退院後の生活をイメージしながら、使えるサポートを借りてゆっくり考えてください。

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