「今日はカンファレンスです」と言われて向かったら、思ったより長く続いた――。そんな経験はありませんか。
実は、退院前に開かれる会議には2種類あって、多くの場合、同じ日に続けて行われます。前半は病院からの申し送り、後半は在宅サービスの担当者との打ち合わせ。呼び方も内容も違うのですが、家族には「ひとつの長い会議」に見えてしまいがちです。
先日、私自身も医療ソーシャルワーカー(MSW)としてではなく、家族として、父の退院前カンファレンスに参加してきました。そのときに感じたことを、やさしくお伝えします。
退院前カンファレンスは「2部構成」
私たちが参加したときも、前半と後半で、集まる人も話す内容もはっきり変わりました。
前半:退院前カンファレンス(病院からの申し送り)
病院側のスタッフ(医師・看護師・PTなど)が中心になって、入院中の様子を共有してくれる時間です。看護要約という文書が配られ、注意障害や記憶・判断力の状態、歩行の様子など、退院後の生活に関わる情報がまとめて伝えられました。
後半:サービス担当者会議(在宅チームとの打ち合わせ)
病院のスタッフが退席し、ケアマネジャー・訪問看護ステーション・デイサービス・福祉用具の担当者など、在宅生活を支える方々と家族だけが残ります。ここからは、これから始まる暮らしに向けた、より具体的な計画づくりです。
私たちのときは、訪問看護ステーションから担当のPT・看護師・管理者の3名が来てくださっていて、「こんなに顔の見える体制で迎えてもらえるんだ」と、家族としてほっとする気持ちがありました。
📝 「前半と後半、どちらも同じ会議」だと思っていると、後半に入ったところで「まだ続くんですか…?」と戸惑うことがあります。呼ばれる前に「2部構成かもしれない」と知っておくだけで、心の準備がしやすくなるかもしれません🌿
デイサービスの切り出し方――説明を絞るという工夫
サービス担当者会議の中で、デイサービスの利用について話す場面がありました。認知症のある方の場合、新しい場所や知らない人との関わりに、抵抗を感じることも少なくありません。
このときデイサービスの職員の方がしてくれた説明は、とてもシンプルなものでした。
- 「リハビリ」「迎えに来てくれる」という、必要最低限の言葉だけで伝える
- 父にとってよく知っている地名を出し、安心材料にする
- その場で細かい説明を重ねず、迷うすきを与えない
結果として、父は大きな抵抗もなく「ああ、あのへんか」という反応で受け止めてくれました。デイの職員の方が「送り出していただければ、あとは私たちが頑張ります」と言ってくださったのも、家族としてとても心強い言葉でした。
説得しようとするほど身構えてしまう、というのは認知症介護のあるあるかもしれません。情報を絞り、安心できる要素をひとつ添える――それだけで、驚くほどすんなり進むこともあります。
「わからんから、任せるわい」――同意のサインと、その後に残るもの
この日、いちばん心に残った場面をお伝えします。
大勢のスタッフに囲まれ、父はおそらく何が起きているのか、よくわかっていなかったと思います。それでも、わからないなりに「お世話になります」と挨拶をし、妹に「わからんから、任せるわい」と話しかけていました。ケアプランの同意書にも、自分の名前を自署することができました。
ただ、会議が終わったあと、父は「わからん」「今の、なんの話じゃったかの」と、もうその内容を覚えていませんでした。
同意のサインをした直後に、その内容を忘れてしまう。専門職としては見慣れた場面のはずなのに、家族としてその場に居合わせると、少し複雑な気持ちになりました。
「本人の意思をどこまで確認できたと言えるのか」という問いに、簡単な答えはありません。ただ、今回はっきり感じたのは、覚えていられるかどうかと、その場でまわりを信頼して委ねられるかどうかは、別の力だということです。
父は、内容を覚えていられなくても、「わからないから任せる」と人に委ねることができました。これは、認知機能が落ちてもなお残っている、ひとつの立派な力なのだと思います。同意能力について迷いや不安がある場合は、病院のMSWやケアマネジャーに率直に相談してみてください。ご家族だけで抱え込む必要はありません🌿
退院直後は、いちばん気をつけたい時期
カンファレンスで共有されたことのひとつに、「注意障害と、自分でできると思い込みやすい傾向(自己過信)が重なると、転倒リスクが高くなる」というお話がありました。
病院という慣れた環境から、勝手が違う自宅に戻った直後は、特に注意が必要な時期だといわれています。手すりの設置など環境を整えることに加えて、退院後しばらくは、ご家族やケアマネジャー・訪問看護と密に連絡を取り合いながら様子を見ていく体制があると安心です。
浴室や居室まわりの環境整備については、以前の記事でも詳しくお伝えしています。あわせてご覧いただけたら嬉しいです。
まとめ|わからないなりに、託せる強さがある
退院前カンファレンスとサービス担当者会議は、同じ日に続けて行われることが多いけれど、実は目的の違う2つの場です。前半は病院からの申し送り、後半はこれから始まる暮らしの計画づくり。そう知っておくだけで、当日の戸惑いは少し減らせるかもしれません。
そして、内容をすべて覚えていられなくても、その場でまわりを信頼し、委ねることができる――それもまた、ご本人に残っている大切な力だと、私は感じています🌸
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