「今日はデイサービスの日よ」と伝えると、決まって不機嫌になります。「行かん」「なんで行かないといけんのか」と、ひと悶着あるのが常です。
ところが、実際にお迎えのスタッフが来ると、まるで別人のように、にこやかに「お世話になります」と出かけていく。この不思議なギャップに、最近よく笑ってしまいます。
週4日、サービスのある暮らし
退院してしばらく経ち、父の一週間には、こんなリズムができてきました。
- 月曜:訪問リハビリ
- 水・木曜:通院リハビリ
- 金曜:デイサービス
何となく、予定通りに回るようになってきました。とはいえ、すんなり定着したわけではありません。むしろ、週の半分は「行きたくない」との攻防から始まります。
説明すると拒否、本番はよそ行き
面白いのは、その反応の出どころです。前後に説明したとき——つまり「明日はリハビリの日だからね」「今日はデイの日よ」と伝えた瞬間は、ほぼ毎回、拒否的な反応が返ってきます。
ところが、実際にスタッフが玄関に立つと、態度が一変します。少し表現は悪いですが、いわゆる「よそ行き」の対応になるのです。丁寧な挨拶、素直な受け答え、その場はきちんとこなしてしまう。
見通しを伝えられたときの不安と、実際に人と向き合ったときの振る舞いは、どうやら別の回路で動いているようです。「嫌だ」という言葉を額面通りに受け取って、無理に説得しようとする必要はないのかもしれない——そう思うようになりました。
📝 見通しを伝えられると身構えてしまうけれど、その場に立つと自然に振る舞える。これは珍しいことではなく、認知症の有無にかかわらず、誰にでもある反応の一つだと感じています🌿
このパターンは、デイサービスの日に限りません。月曜の訪問リハビリでも、水木の通院リハビリでも、同じことが起きています。前日や当日の朝に予定を伝えると、決まって渋い顔。けれど、実際にPTさんが玄関に立てば、「お願いします」ときちんと挨拶をして始まります。
週に4日、形の違うサービスで同じ現象が繰り返されるのを見ていると、これは特定のスタッフとの相性の話ではなく、もう少し根の深いパターンなのだろうと感じるようになりました。
なぜ、見通しと本番でこんなに違うのか
MSWとして現場でよく見聞きするのも、似たような話です。「これから何をされるか」を先に想像する場面では、不安や抵抗が先に立ちやすい一方で、実際にその場に身を置くと、目の前の相手に応じた振る舞いが自然と出てくることがあります。
特に認知症のある方の場合、「まだ起きていないこと」を頭の中だけで組み立てるのは、案外負担の大きい作業なのかもしれません。見通しを伝えられても、その内容を保持したまま不安と付き合い続けるのは大変です。けれど、目の前に人が現れた瞬間からは、記憶に頼らず「今、ここ」で反応すればいい。そちらの方が、負担がずっと軽いのだろうと想像しています。
担当が女性ばかりなのは、偶然じゃないかもしれません
ここでひとつ、気づいたことがあります。訪問リハビリの担当は女性のPTさんです。デイサービスのスタッフも、たまたまなのか、女性が多いように見えます。
実は入院中、男性のPTさんに対しては拒否が強かった、という情報が共有されていました。もしかすると、退院後の担当割りにも、そうした申し送りが活かされているのかもしれません。確認したわけではないので、あくまで推測ですが、こういう配慮が現場でさりげなく行われているのだとしたら、ありがたいことだなと思います。
(もし本当にそうなら、父は今、反論する相手を与えられていないのかもしれません。半分冗談ですが。)
妹の「送り出し作戦」、継続中です

初めてのデイサービスの日、妹はしれっと送り出す作戦で乗り切りました。以前の記事にも書きましたが、説明を絞り、知っている地名の安心感を添え、迷うすきを与えない。
あれから何週も経ちますが、この工夫は今も続いています。単発でうまくいっただけではなく、毎週、同じやり方で機能し続けているということに、実はいちばん驚いています。「初回だけの奇跡」ではなく、「繰り返し使える型」になっているのだと思います。
家族としてできる、小さな切り替え
この一連の流れを見ていて、家族としての力の入れどころが少し変わってきました。
- 前日から何度も予告して、説得しようとしすぎない(説明を尽くすほど、身構える時間も長くなるようです)
- 直前の声かけは、用件を絞って、あっさりと伝える
- 「行かない」と言われても、その場で結論を出そうとしない。スタッフが来てからの反応を、もう少し待ってみる
- うまくいった日のやり方は、次の同じ曜日にもそのまま使う(工夫は使い回してよい)
「事前にきちんと納得してもらわなければ」という気負いを、少し手放してもいいのかもしれません。当日の雰囲気づくりの方に、力を使う場所を移してみる。それだけで、週の始まりの空気が少し軽くなる気がしています。
まとめ|「言うこと」と「できること」は別
説明すれば拒否され、本番になればよそ行きになる。この一見矛盾したパターンは、介護のあるあるとして、多くのご家庭で見られるものかもしれません。
「嫌がっているから、やめておこう」と決めつけず、まずは当日の様子を見てみる。事前の説得に力を注ぐより、当日の雰囲気づくり——誰が来るか、どう声をかけるか——に工夫の余地があることの方が多いように感じています。
以前の記事で、「歩かされる」のと「自ら歩こうと思う」のとでは大きな違いがある、という話を書きました。今回の「よそ行き」の話も、根っこは同じかもしれません。本人の中には、状況に応じて自然と立ち上がる力が、まだちゃんと残っているのだと思います🌸
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