回復期リハビリ病棟からの退院~認知症高齢者の退院直後の注意点〜

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退院の日、担当のOT(作業療法士)さんが、うれしそうに教えてくれました。「FIM(機能的自立度評価)、入院時よりかなり良くなっていますよ。辛めに見ても90点台です」。

数字だけ見れば、順調そのもの。けれど、その言葉には続きがありました。「能力的にはほとんどのことができます。ただ、注意障害があって、まだ体力(耐久性)が戻っていないので、転倒リスクは高いままです」。

この「できる」と「安全にできる」の違いを、退院当日から翌日にかけて、家族としてあらためて実感することになりました。

「できる」のに、いちばん心配なこと

FIMは、食事・移動・排泄・認知面など、日常生活の自立度を数値化する評価です。90点台というのは、多くの動作を自分でこなせる、という意味になります。

ただ、数字が高いことと、危険がないことは、イコールではありません。私たちの場合、退院前のカンファレンスでも「注意障害と自己過信が重なると、転倒リスクが高くなる」と共有されていました。実際、退院前カンファレンスでも話し合われた内容そのものでした。

実際、退院翌日には前日より歩行状態が悪くなり、右側に傾きながら前のめりに歩く場面がありました。「できる」は、その日の体調やその瞬間の集中力に、大きく左右されるのだと感じます。

📝 FIMなどの評価点は、あくまで「その時点での目安」です。数字が良くても、退院直後は特に、環境や体調によって日々の動きが変わることを前提に見守ることが大切だと感じます🌿

「休まない」理由は、興奮ではなかった

自宅に着いてすぐ、父はベッドに横になるだろうと予想していました。ところが実際は、リビングの椅子に座って過ごし、休むように勧めても、頑なに自室へ行こうとしません。家族が一緒に部屋で過ごしても、少し動いてはまた起き上がる、その繰り返しでした。

最初は「退院がうれしくて、興奮しているのかな」と思っていました。けれど、よく見ていると、どうやら違ったようです。

父は、自分を置いて家族が出かけてしまうのではないかと、不安に思っていたのです。

そう気づいてから見ると、じっとしていられない様子にも、また違う意味が見えてきました。落ち着きのなさの裏に、「ひとりになる不安」が隠れていることがある――このことは、退院直後の家族にとって、知っておく価値があるかもしれません。

結局その日は、通帳の用事やデイサービス用の上履きの買い物に、父も一緒について出かけました。外出には、まったく嫌がる様子がありませんでした。

浴室の手すり、実は「福祉用具」ではなかった

退院に備えて、浴室には吸盤式の手すりを購入して準備していました。

浴槽用手すりには、介護保険の対象になるもの(浴槽の縁を挟んで固定するタイプなど)と、対象にならないものがあります。私たちが用意した吸盤式のものは、対象外の市販品としてご案内いただき、安全のため使うたびに取り付け、使い終わったら取り外すという運用にしています。

正式な対象範囲は自治体や品目によって判断が分かれることもあるようなので、気になる方は担当の福祉用具専門相談員さんやケアマネジャーさんに確認してみてくださいね。

父はこの手すりとシャワー椅子を使って、なんとか一人で入浴できました。以前の記事でお伝えした「介助ではなく環境整備」という発想が、ここでも活きた形です。ちなみに、なかなか浴室から出てこないので妹が覗いてみたら、鏡の前でひげ剃りをしていたそうで、家族としては思わず笑ってしまう場面でした。

真夏の「車には乗るけど降りない」問題

退院翌日、妹から聞いた話です。買い物について行くと言って車には乗るものの、目的地に着いても車から降りようとしない、ということがあるそうです。

エアコンをつけたままにしていても、真夏の車内に一人残しておくのは心配なもの。「一緒に行く」という気持ちと、「実際に歩いて店内まで入る」ことの間には、思っている以上に距離があるのかもしれません。ちょっとした外出でも、車を降りたあとの動線まで考えておく必要があると、あらためて感じました。

退院したことすら、翌日には忘れている

退院の翌々日には、父は入院していたこと自体があいまいになり、前日に退院したこともすっかり忘れていました。次の日の通院リハビリも「行かん」と言い張っています。

大きな一歩だった「退院」という出来事さえ、本人の記憶にはとどまらない。それでも、その日そのときは「よろしくお願いします」と、わからないなりに人と向き合うことができていました。訪問看護のモニタリング訪問でも、同じように応対できていたのが印象的でした。

覚えていることと、その場で誠実に向き合えること は、別の力なのだと、退院前カンファレンスのときと同じように感じています。

まとめ|退院直後は「できる」を疑いながら見守る時期

退院当日から翌日にかけて、「できる」ことと「安全にできる」ことの違いを、何度も実感しました。FIMの数字が良くても、注意障害や体力の戻り具合によって、その日の様子は大きく変わります。

そして、落ち着きのない行動の裏には、案外シンプルな不安が隠れていることもあります。退院直後は、ご本人にとっても、ご家族にとっても、まだ手探りの時期。焦らず、その都度の様子を見ながら、少しずつ暮らしを整えていけたらと思います🌸


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