住環境調査で、専門職の方にこう言われました。
「開き戸だと、前後の動きで転びやすいかもしれません」
正直、扉の種類まで気にしたことがありませんでした。私たちの実家は、居室もダイニングもトイレも浴室も、すべて開き戸です。当たり前すぎて、リスクとして意識したことがなかったのです。
この記事では、開き戸と引き戸の違いと、なぜ開き戸が転倒リスクにつながるのか、そしてすべてを一度に変えなくてもよい理由についてお伝えします。
開き戸と引き戸、何が違うの?
- 開き戸:ドアノブを回して、手前や奥に押し開くタイプの扉
- 引き戸:レールに沿って横にスライドさせて開閉するタイプの扉

一般的な住宅は開き戸が多く、和室の襖や一部の浴室・トイレなどで引き戸が使われていることもあります。
なぜ開き戸だと転びやすいのか
開き戸を開け閉めするときは、体を前後に動かす必要があります。
- 扉を引く(押す)ときに、体重が後ろ(前)に傾く
- 開いた扉をよけながら通過するため、体の向きを変える動作が加わる
- 車いすや歩行器を使っている場合、扉の可動域を確保するための切り返しが必要になる
高齢になると、こうした「体を前後に大きく動かす」「向きを変える」動作そのものが、バランスを崩しやすいタイミングになります。特に急いでいるときや、夜間で視界が悪いときは、リスクがさらに高まります。
一方、引き戸は横に滑らせるだけなので、体を大きく前後に動かす必要がなく、開閉中も体の向きが安定しやすいという特徴があります。
特にリスクが高い場所
すべての扉が同じリスクというわけではありません。特に注意したいのは、頻繁に使う場所と急いで使うことが多い場所です。
- トイレ:一日に何度も出入りする。尿意を感じてから急ぐことも多い
- 浴室:床が濡れていて滑りやすい状態で扉を操作する
- 寝室(居室):夜間、寝ぼけた状態で出入りすることがある
私たちの実家でも、居室の扉を引き戸に変更するかどうかを、住環境調査の場で検討することになりました。
扉を変えなくてもできる対策:縦手すりという選択肢
扉そのものを引き戸に変えなくても、できる対策があります。それが、扉の横の壁に縦手すりを1本つけることです。
開閉のときによろけても、すぐそばに手すりがあれば、とっさに持って体を支えることができます。工事の規模も、扉を丸ごと取り替えるのに比べればずっと小さくて済みます。
私たちの実家では、次のように段階的に対策を進める予定です。
- 退院時(すぐにできる対策):床と天井を突っ張って固定する、工事不要のつっぱり棒タイプの手すりを設置
- 住宅改修(後日、工事で対応):トイレと浴室の扉のそばに、壁づけの縦手すりを設置
扉を引き戸に変えるかどうかで悩んだときは、「まず手すりだけつける」という選択肢も検討してみてください。
すべてを一度に変えなくても大丈夫
「うちも全部開き戸だから、全部変えなきゃ」と思う必要はありません。
住宅の構造によっては、引き戸に変更するための壁のスペースが確保できない場所もありますし、費用や工事期間の兼ね合いもあります。以前の記事(介護保険の住宅改修費)でお伝えした通り、扉の取り替えも住宅改修費の支給対象ですが、上限額は20万円です。扉ごと変えるか、手すりだけで対応するかによって、費用も工事の規模も変わってきます。
すべてを一度に変えるのではなく、
- 一番使う頻度が高い場所
- 一番リスクが高そうな場所
から優先順位をつけて考えるのが現実的です。専門職と一緒に、生活の中で実際にどこが危ういかを確認しながら決めていくとよいと思います。
まとめ
- 開き戸は開閉時に体を前後に動かす必要があり、転倒リスクにつながることがある
- 引き戸は横にスライドするだけなので、体の向きが安定しやすい
- トイレ・浴室・寝室など、頻繁かつ急いで使う場所は特に注意
- 扉を変えなくても、そばに縦手すりを1本つけるだけで対策になる
- すべての扉を一度に変える必要はなく、優先順位をつけて検討すればよい
扉の種類は、住んでいると当たり前すぎて見過ごしがちなポイントです。住環境調査のような機会に、一度専門職と一緒に見直してみることをおすすめします。

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