開き戸で、本当に転びました〜予測されていた転倒が起きた夜〜

医療・福祉の制度、支援

退院前の住環境調査で、専門職の方にこう言われていました。

「開き戸だと、前後の動きで転びやすいかもしれません」

そのお話は以前の記事にまとめていて、なかでも寝室は「夜間、寝ぼけた状態で出入りすることがある」ため注意が必要だ、とも書いていました。

その、まさに書いたとおりの場所で、父は転びました。退院して、2日目の夜のことです。

深夜、居室の扉の手前で

父がトイレに行こうとして、居室の扉の手前で転んでいたことがわかったのは、翌朝になってからでした。幸い大きなけがはありませんでしたが、家族としては胸がひやりとしました。

父の居室の扉は開き戸です。部屋から出るときは、扉を手前に引く動作になります。

あらためて振り返ってみると、あの夜には、リスクになる条件がいくつも重なっていました。

  • 夜間で、視界がはっきりしない
  • 眠っていた直後で、頭も体もまだ完全には目覚めていない
  • トイレに急いでいる
  • 扉を手前に引くため、体重が後ろに移動する

ひとつひとつは小さなことでも、重なると危うい。専門職の方が指摘してくださっていたのは、まさにこの重なりのことだったのだと、あとになって実感しました。

退院直後という、もうひとつのリスク

もうひとつ、あとから気づいたことがあります。

転倒の翌日、通院リハビリで「2日間で、びっくりするほど筋力が落ちています」と言われたのです。

言われてみれば、退院してからの父は、日中ほとんど座って過ごしていました。入院中はリハビリの時間があり、病棟の中を車いすで移動する機会もありました。ところが自宅に戻ると、動く必要のある場面そのものが減ってしまう。「家に帰った=安心」ではなく、活動量が落ちやすい時期でもあるのだと、数字ではなく実感として突きつけられました。

環境が変わったばかりで、まだ体も慣れていない。そこに筋力低下が重なる。退院直後がいちばん気をつけたい時期だと言われるのは、こういうことなのだと思います。

予測されていた転倒に、どう向き合うか

正直に言えば、「やっぱり、あそこだったか」という気持ちがありました。

指摘されていたのに、防げなかった。そう思うと、自分たちを責めたくなる瞬間もあります。

けれど、少し時間が経って思うのは、予測されていたからこそ、次の一手がすぐに決まったということです。

どこが危ないかを、住環境調査の時点で専門職と一緒に確認していた。だから転倒のあと、「なぜ転んだのか」を探すところから始めなくてよかった。居室の扉を引き戸に変更する住宅改修も、迷わず進めることになりました。

📝 転倒は、すべてを防ぎきれるものではありません。それでも「どこが危ういか」を事前に把握しておくことには、大きな意味があります。起きてしまったときに、慌てず次の手を打てるからです🌿

その日からできた対策と、季節という締め切り

転倒のあと、すぐに決めたことがあります。

居室の扉を閉めるのをやめて、開け放しておくことにしました。

それまでは、夜は扉を閉めて休んでいました。けれど扉が開いたままなら、そもそも開閉の動作が必要ありません。夏で暑い時期だからこそできることでもあります。お金も工事もいらず、その日からできる対策でした。

ただ、これは期間限定の対策でもあります。

涼しくなれば、扉は閉めざるを得ません。冷暖房のことを考えても、開け放したままの冬は現実的ではないでしょう。つまり、扉を閉める生活に戻った瞬間、リスクもまた戻ってくるということです。

そう考えると、私たちには締め切りがあります。「涼しくなる前に、居室の扉を引き戸に変えておく」ということです。

介護保険を使った住宅改修は、事前申請が必須で、申請から工事完了まで1か月以上かかることも珍しくありません。夏のうちに動き始めておかないと、涼しくなる時期に間に合わない可能性があります。

「今すぐできる応急の対策」と、「いつまでに本格的な対策を終えるか」。この2つをセットで考えておくと、住宅改修の段取りが立てやすくなると感じています。

「転ばせない」と同じくらい大事な、「転んだあと」の備え

今回のことで、家族として新しく考えるようになったことがあります。

それは、床から自分で起き上がる練習を、リハビリに入れてもらうという視点です。

転倒予防というと、どうしても「転ばせないための環境整備」に意識が向きます。手すりをつける、段差をなくす、扉を変える。もちろん、それはとても大切です。

でも、どれだけ整えても、転倒をゼロにはできません。だとすれば、転んでしまったあと、どう起き上がるかもまた、備えておくべきことなのだと思うのです。

家族がすぐそばにいるとは限りません。夜中に一人で転んだとき、自力で起き上がれるかどうかで、その後の状況は大きく変わります。長く床に横たわったままになることのリスクもあります。

訪問リハビリや通院リハビリの担当の方に、こんなふうに相談してみるのはどうでしょうか。

  • 床から起き上がる動作を、練習に入れてもらえないか
  • 実際に転んだ場所を見てもらい、そこでの動線を確認してもらえないか
  • 入浴など、家族が心配している場面の環境を見てもらえないか

訪問リハビリは、実際の生活の場に来ていただけるのが大きな強みです。「どこで転んだか」を、その場所で共有できる。これは通院リハビリではなかなかできないことです。

転倒のあとに残るもの

もうひとつ、書いておきたいことがあります。

転倒のあと、家族の中に「一人にできない」という気持ちが強く残りました。

夜、同じ部屋で休むようになる。少し目を離すのが怖くなる。買い物に行くのも気がかりになる。転倒そのものは軽くて済んでも、家族の心の中には、確実に変化が起こります

これは、決して大げさな心配ではありません。実際にリスクは高いのですから、自然な反応です。

ただ、その緊張をずっと一人で抱え続けると、家族のほうが先に疲れてしまいます。だからこそ、ケアマネジャーや訪問看護、訪問リハビリといった「一緒に見てくれる人たち」に、遠慮なく状況を共有することが大切だと感じています。「転びました」と伝えることは、迷惑をかけることではなく、必要な情報を届けることです。

まとめ|備えていても起きる。だから「その後」まで含めて考える

  • 開き戸のリスクは、夜間・寝起き・急ぎといった条件が重なったときに現実になりやすい
  • 退院直後は環境の変化に加え、活動量が減って筋力が落ちやすい時期でもある
  • 予測されていた転倒でも、防ぎきれないことはある。それでも事前に危険な場所を把握しておくと、次の手が早い
  • 夏なら「扉を開け放しておく」という応急の対策が使える。ただし期間限定なので、涼しくなる前に住宅改修を終える逆算が必要
  • 「転ばせない工夫」と同じくらい、「転んだあと、自分で起き上がる練習」も備えになる
  • 転倒後の家族の緊張は自然なもの。在宅チームに状況を共有して、一人で抱えない

専門職として、リスクの説明を何度もしてきました。それでも家族として当事者になってみると、「わかっていること」と「防げること」は、やはり別なのだと痛感します。

完璧に防ごうと気負いすぎず、起きたときにどうするかまで含めて、少しずつ備えていけたらと思います🌸


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